インプラント周囲炎の予防と治療
インプラント治療を受けたことで、「これでもう噛めない不自由さから解放される！」と安心された方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ところが、治療が終わったあとも、インプラントには注意しておきたいことがあります。
それは、インプラントの周囲に炎症が起こる「インプラント周囲炎」と呼ばれる病気です。
気づかないうちに進行し、放置するとインプラントが抜けてしまうこともあるため、油断はできません。
ただし、日々のケアや定期的なチェックを欠かさなければ、防げる可能性は十分にあります。
インプラントを少しでも長く、そして快適に使い続けるためには、インプラント周囲炎について正しく知ることが大切です。
そこで今回は、インプラント周囲炎の予防方法と治療の選択肢について、具体的にご紹介します。
まずは知っておきたい！「インプラント周囲炎」とは
インプラント周囲炎とは、インプラントの周囲の歯ぐきや骨に炎症が起こる疾患です。
「歯周病」とよく似ていますが、インプラント周囲炎の場合は、人工物の周辺の組織に炎症が生じるのが特徴です。
インプラント周囲炎の症状
インプラント周囲炎も歯周病と同じように、少しずつ炎症の範囲が広がり、段階的に進行します。
初期の段階では、インプラント周囲の歯垢（プラーク）に含まれている細菌が出す毒性物質によって、歯ぐきに炎症が起こります。
歯磨きの際に出血したり、歯ぐきが腫れぼったくなったりしている場合は注意が必要です。
この時点で治療を行わなければ、インプラント周囲炎は悪化し、インプラントを支えている骨を溶かすことになります。
インプラント周囲炎は初期の段階では、自覚できる症状はほとんどないでしょう。
- 歯ぐきの腫れや赤み
- 歯ぐきの軽い痛みや違和感
- 口臭の変化
- インプラント周囲の膿
- インプラントの動揺
といった症状がある場合は、すでにインプラント周囲炎が進行している可能性があるため、できるだけ早く歯科を受診しましょう。
症状がない場合も、定期的な歯科検診でのチェックが必要です。
インプラント周囲炎の原因
インプラント周囲炎の直接的な原因は、歯垢（プラーク）です。
プラークは細菌のかたまりで、そのままにしていると、お口の中で細菌の増殖がくり返されます。
歯磨きの習慣が身についていない方や、磨き方が不十分な方は、磨き残しが多くなり、インプラント周囲炎を発症するリスクが高いため注意が必要です。
また、かぶせ物の形態が適切でない場合や、かみ合わせに問題があると、歯垢が溜まりやすく、インプラント周囲炎が起きやすくなります。
喫煙の習慣がある方や糖尿病などの持病を抱える方は、免疫機能が低下しやすく、インプラント周囲炎を発症しやすい状態です。
インプラント周囲炎の治療法
インプラント周囲炎を発症してしまった場合は、適切な治療を行う必要があります。
治療の内容は、インプラント周囲炎の進行段階によって異なります。
初期から中等度のインプラント周囲炎の場合
初期の段階では、歯ぐきの炎症や軽度の腫れ、出血を伴います。
この段階で、適切な治療を行うことで、症状の進行を食い止めることができます。
インプラント周囲炎の治療の基本は、原因となる歯垢の除去です。
歯科のクリーニングで汚れを取り除き、毎日のセルフケアを見直すことで症状の改善が期待できます。
重度のインプラント周囲炎の場合
歯と歯ぐきの間のすき間の奥深くに歯垢がたまり、骨の破壊が進んでいる場合は、外科的な治療が必要です。
インプラント周囲を切開して、歯根面の歯垢や歯石を取り除く治療を行います。
また、骨の量が不足している場合は、骨造成を行います。
インプラント周囲炎を予防するために
インプラント周囲炎を予防するためには、定期的なメンテナンスを継続させる必要があります。
メンテナンスは、セルフケアと歯科医院のプロケアに分けられます。
毎日の正しいセルフケア
予防の基本は、毎日の歯磨きです。
それは、ご自身の歯であってもインプラントであっても同じです。
「食べたら磨く」を徹底し、丁寧に歯を磨くことを意識しましょう。
特に、歯と歯の間や歯と歯ぐきの境目は汚れが溜まりやすいため注意が必要です。
歯と歯の間は、歯ブラシだけでなく、歯間ブラシやデンタルフロスを併用することで、汚れの除去率は高まります。
ご自身のお口に合うデンタルケア製品を使って、毎日丁寧に歯を磨くことで、インプラントの周囲を清潔に保つ必要があります。
また、持病の管理や生活習慣の見直しも、インプラント周囲炎を予防するために必要です。
歯科医院での定期的なメンテナンス
毎日歯を磨いていても、どうしても汚れは残ってしまうものです。
セルフケアで取り除けない汚れについては、歯科の専門のクリーニングで取り除きましょう。
定期検診では、歯ぐきの状態やかみ合わせのチェックも行います。
インプラントだけでなく、お口全体を診て、異常があれば、適切な処置を行います。
インプラント周囲炎は早期発見・早期治療が重要
インプラント周囲炎は、歯周病と似ている症状があらわれますが、歯周病よりも進行のスピードが速く、重症化するリスクも高いという特徴があります。
インプラント周囲炎の進行のスピードが速い理由の一つは、インプラントには、天然歯にある「歯根膜（しこんまく）」が存在しないことです。
天然の歯には、歯根と顎の骨の間に歯根膜という、薄い膜のような組織があります。
歯根膜には、
- 衝撃を吸収して骨へのダメージを防ぐ
- 異常を感知する
- 感染を抑える
といった役割があります。
ところが、インプラントには歯根膜が存在しません。
歯根膜がないことで、
- 炎症やかみ合わせの異常に気づきにくい
- 細菌感染が広がりやすい
- 炎症がおさまりにくい
- 骨とインプラント体が接しているため、骨の吸収が進みやすい
といった影響があり、インプラント周囲炎に気付きにくいだけでなく、急速に進行する恐れがあるのです。
そのため、インプラント治療後のケアに関しては、基本的にはご自身の歯と同じように行っていただけますが、歯根膜がない分、丁寧に、そして継続して行うことが大切です。
インプラント周囲炎にならないために、丁寧な歯磨きを毎日続けましょう。
「甲府向町歯科」の定期検診でインプラントを長持ちさせましょう
当院では、インプラント治療後は、3〜6ヶ月ごとの定期検診をご案内しています。
毎日の丁寧なセルフケアと定期的なプロのメンテナンスを継続することが、インプラントを長く健康に保つ最も重要なポイントです。
気になる症状がなくても、定期検診に通って、お口の健康を維持しましょう。
インプラントは、適切なケアを続けていれば、15年、20年とお使いいただくことができます。
当院では、患者様の年齢やライフスタイルに合わせて、適切な治療法をご提案しますので、どのようなことでもご相談ください。
甲府の「甲府向町歯科」は、JR中央本線「酒折」駅から車で7分、Honda Cars山梨和戸店さんの向かいにあります。
飲食店が立ち並ぶエリアにあり、お食事やお買い物のついでにも立ち寄りやすいクリニックです。
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甲府向町歯科 院長 磯部 明夫